内航海運とはなに?
内航海運とは、国内の荷物(貨物)を海上ルートで輸送することです。
海外の貨物を海上運送するのは当たり前のように思えますが、国内間の貨物の運送を海上ルートで行うと言われると、意外に思う人も多いんじゃないでしょうか。
日本は島国で、しかも山や森林が多い国土ということもあって、じつは昔から海上運送が盛んに行われてきました。
日本海側には、江戸時代に「北前船」と呼ばれる海上運送で巨万の富を築き上げた家が現在でも残っています。
現在でも、そんな国内間の海上運送が内航海運の形で残っているとも言えるのです。
少し古いデータですが、2014年現在で5249隻の船が内航海運に従事しており、その総運送量はじつに360万9025トンになも及びます。
この内航海運に従事している船舶には幅広い貨物を運ぶ船に加えて、自動車やセメント、石材や土砂などを運ぶための専門の船なども含まれています。
じつにさまざまなものが、毎日海上ルートで運ばれているわけです。
じつは、国内の産業基礎資材の80%ほどをこの内航海運によって運んでいます。
ですから、この海上ルートの運行が機能しなくなると、我が国の産業はたちまち立ち行かなくなってしまうわけです。
わたしたちの日常生活ではなかなか目につかないところで、非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。
内航海運の仕事内容とは?
そんな内航海運では、どんな業務が行われているのでしょうか?
じつは、一般の運送業とそれほど代わりはありません。
運送する荷物を港にまで運んで船に積みこみ、船が目的に到着したら、その荷物を配送センターにまで運んで配達業務に移します。
荷物を乗せる場所が港になること、移動ルートが海上になることのほかは、一般的な運送業とそれほど大きな差はないのです。
ただし、内航海運では先述した自動車やセメントなど業務用の荷物が多く、それらを生産した工場から港に運ばれて船に積み込まれるケースも多く見られます。
近年になって、この内航海運の重要性が指摘される機会が増えています。
理由は、地球温暖化と環境問題への取り組みへの関心の高まりです。
自動車よりも二酸化炭素の排出量が少ない船舶は、荷物の輸送手段として非常に適しているため、もっと積極的に活用すべきとの声が高まっているのです。
国内の貨物輸送に関しては、「モーダルシフト」という概念が提唱されています。
車より、二酸化炭素の排出量が少ない鉄道や船舶を使った輸送へとシフトさせるべきという考え方です。
船舶は鉄道よりも利用の自由度高く、とくにこのモーダルシフトに合った選択肢とも言われています。
ですから、これから内航海運の需要が拡大し、わたしたちの日常生活と地球環境の両方に欠かせない存在としてますます活躍していくことも予想されます。